「それ、言う?」
アメリカバージョンとジャパン版
2015年の話。ビザのスポンサーから「世田谷区三軒茶屋付近でアパートを借りろ」と言われ早速紹介された不動産会社に手伝ってもらいいくつか見に行く事になりました。ここまではオッケー。不動産会社が手に入れた資料には物件が5ヶ所。そのうちの3ヶ所は大家が「外国人は断る」と指摘していたので、「事前に外国人が入居をお願いしているって言いました?」と担当者に聞いたら、「言ったよ」との回答。「なら、大家が外国人を断っている3ヶ所って、資料もらっても意味ないですよね」と私が言ったら、「確かにそうだな」と回答。
はい。オッケー。
これは、日本にいる外国人に対して普通にある事です。外国人には貸したくない。うん。そうなんだ。
読んでくださっている日本の皆様がどこまでこの言葉に対して違和感、疑問、恥ずかしさを抱えているかが分からないので、どうしてこれが「それ、言う?」行為であるかを説明します。
何回も聞いています、「ここは日本なので」と言うフレーズ。確かに日本には日本の普通があり、日本での当たり前、あってもよし・言ってもよしと言う言葉、考え方、物事の理解の仕方がある。国民の97%が「同じ」である日本。外の人は目立つ。外の人は日本の普通を必ずしも知らない。外の人である以上、日本のやり方を知らない。考え方も分からない。ルールを知らない。マナーも知らない。これが日本人にとってどれだけ嫌かも分からない訳ではないのです。(少なくとも日本生まれ・日本育ち・日本滞在歴30年の私には)
でも、「ここは日本なので」と思う前に、「ここは日本なのでそう思ってよし」であると言う考え方もあるのを知ってもらいたいです。日本ではそう言えるかもしれないけれど、日本を出ると「それ、言わないし」と認識する人の数。外国人だから家を貸さないって日本以外の国では「言わない」事なのです。言う人はいますよ、もちろん。でも、言うと「それって違うの」と言われて当たり前と思う人が世界に大勢いると言う事をどこまで認識しているのだろうかと疑問の思う私もいるのです。
現在のアメリカ。2016年の大統領選挙キャンペーン中にトランプが取った行動、言った言葉が今でも「それ、違うから」と思われています。結構なリストなんですよ、彼の暴言。2024年のキャンペーン中も「ハイチ人は犬や猫を食う」とかって言ったのを覚えていますか?それって言わないの。思っていても言わないの。
今までの普通が世界各地で変わりつつあります。この変化の一部に対して私も不満があるのは確かです。でも、「日本では言ってもいいので」それを外から来る人に対して日本のルールを求めると言うのははっきり言って無理なのではないでしょうか。
外国人観光客に対してもそうです。マナーを知らない、とよく読んだり聞いたりします。特に、ネットでは堂々と中国人に対する強烈な愚痴や嫌がらせ、「それって言わないの」と言う言葉を多く見かけます。
自分の国に帰れ
不良外人
外人はゴミ
アメリカ人がネットで日本人に対してこう書いていると言う事実を知ったら日本人はどう思うのでしょう。韓国人が日本人の事をこう書いていたらどう思います?フランス人は?メキシコ人は?イエメンは?ケニヤは?
以前聞いた事がある日本人に対する外国人からのコメントをいくつかリストアップします。
日本人は酒を飲むと大声出す。うるさい。マナーがない。
日本人の男性は酒を飲むとすぐに女性に手を出す。
日本人はアジア系の外国人を上から目線でしか見ない。
日本人の女性は優しく、おとなしく見えるけれど結婚すると怖い。
お酒を飲みたくなくても、飲めなくても「いいから飲め」と言う。
日本人は黒人を嫌う。
日本の地下鉄や電車は女性にとっては危険なところ。
「女のくせに」と言う。
日本人は他人への配慮がない・少ない。
日本人は一般的に外国人を嫌う。
全部聞いた事があるコメントです。でも、さすがにネットでこのコメントを読んだ事はありません。一般的に「それ、言う?」と思われる言葉ってあるのです。
「思っていても言わない」
「思っていても言ってはいけない」とはこのような事ですよね。なら、どうして外国人観光客や日本に住む外国人に対してここまで愚痴るのでしょう。
「それって、よっぽどの事がないと言わないの」数年前にあった出来事で、「よっぽど」な事を一つ紹介します。外交に関する話です。バイデン大統領が「日本は差別をする国だ」と公的に言ったのをご存知ですか?「ここは日本なので」と言う考え方を政治家が通そうとすると、大統領に「違う」と言われて当然ではないでしょうか。
アメリカの例を一つ紹介します。アイダホ州の州議員が(白人男性)もう一人の州議員に対して「ここはアメリカだ。さっさと自分の国に帰れ」と言った事件がありました。(これは、アメリカでは事件なのです)言った相手はアメリカの先住民族の一人。女性。ネイティブ・アメリカンと呼ばれる(以前はインディアンと呼ばれていた人達)の一人に対して白人が「自分の国に戻れ」と言う馬鹿馬鹿しさ。彼の先祖がアメリカに来るとっくの前に彼女の先祖がここに住んでいた。それを知らないのか、気にしていないのか、どうでも良いと思っているのか。彼の傲慢さと品の無さがマスコミで大きく取り上げられました。
現在のアメリカでは、「自分の国に帰れ」と言うコメントはN Gとされています。
「日本人は外国に行ってもその国のルールを守っている」と、今日ある日本人男性に言われました。そう思っているのが可愛いと言いますか、呆れると言いますか。「ふ〜ん、そう思ってるんだ」とそこでその人とは話す意味が消えてしまいます。ルールとマナーは国々によって違います。アメリカでは言ってはいけない事、してはいけない事、しなくてはいけない事を全部知っている訳なんてありません。
ネットは日本のものだけではありません。日本語で書いているから日本人しか読めない・読まない訳でもありません。日本からネットに投稿したとしても、読んでいる人は必ずしも全員日本にいる訳ではない。
書くな、言うなとは言えません。発言の自由は国籍を問わずにある人権だからと信じています。ただ、(あのさ)ネットでの外国人バッシング、日本人以外に読まれている。これは知ってもらいたいです。と言うか、分かるでしょう、これ。分かってよ。