女性のパワー
彼女の茶色い目は古い家の書斎みたいで周りの人を落ち着かせる。そして、あまりにも「もっと知りたい」と興奮させる要素がある。彼女の目を見ていると、何もかもがうまくいくだろうと自然に思う。全く理解出来ないこの感情。
もう一人の女性は昔の映画に登場するパイプを吸う。美しいとは誰が決めるのかは分からないが、少なくとも私にとっては出会った瞬間「なんて綺麗」と思わせるような人ではなかった。彼女の目はブルー。この目がまた説明できないパワーを持っているのだ。言葉で表現できないこの迫力は何だ。「こっちにおいで」と目が私の脳に言っているかのようで自然と彼女の近くによる。真っ先に頭に浮かぶのがアリス。そう。あの不思議な国のアリス。アリスなら説明できるだろう。なぜか分からないけれど違和感なく言われた通りにするアリス。アリスの眼なのだろうか。この女性には美しさがない反面、周りには必ず人がいる。自然と寄ってくるのだ。
この二人の女性が一緒にいると必ず何かが起こるのだ。二人で旅行すると当たり前かのように、ビジネスクラスにアップグレードされる。レストランに行くとシェフが現れ、「ようこそいらっしゃいました」と二人だけに挨拶しに来る。デザートの後に、シェフはまた現れて、「いかがでしたでしょうか」と真剣に聞く。二人が自分のレストランに来ているのが奇跡かのようにシェフは感動し、「お支払いはいりません」と言うのだ。
電車に乗ると、必ず周りの誰かが話しかけてくる。変な事を言う人もいれば、挨拶しにくる人もいる。なぜか先ほど駅弁を3つ買ったおばさんは二人を見て、自然と駅弁2つを渡す。特に子供は当たり前かのようにヨチヨチ走り、手を伸ばしてハグする。
犬はどちらかの女性の靴におしっこし、もう一人の頭に木から八朔が落ちる。ブルーの目の女性がパイプを取り出して口に入れると、いつの間にかライターを持った男性が5、6人現れる。
目の持つパワーを知っているかのように、外観に全く拘らないこの二人はハプニングをもたらすエネルギーを持っている。二人の女性が自分の外観をそのまま受け入れている。メイクしなくてもいい顔とはこの事なのだろうか。通り過ぎる人は大抵振り返り、二人を見る。なぜ振り返るのかは分からないが、自然と頭が前から後ろを見るようにと動く。
アメリカを含む様々な国の女性達は、徐々に自分のパワーを取り返している。特に怒りと愛のパワーが爆発し、男性群は完全に混乱。子供への愛。男への怒り。母から娘へと渡されるこの感情。もう何世代、何百年、何千年と愛と怒りをメインに生きてきた女性がなぜか最近パワーを取り返し始めたのだ。さぁ、どうする、ミスター達。
女は魔女。気になる存在。美しさとは関係ないエネルギーと気を持っているのだ。
世界が大きく変わりそうな今。ここに女のパワーが加えられると果たしてどうなるのか。こんなに将来が楽しみであるのは生まれて初めてかも。