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「知らなかった」ですまない話と「もういい」のパワー

時々何かのきっかけで「この人はもういいかも」と思う事があります。今までの仕事で日米、日欧を行き来して35年。色んな人に出会いました。「この人の話をもっと聞きたい」と言う人もいれば、「もういい」と思う人もいました。

もういい。個人的に最近ハマっている言葉です。

約10年前に東京の歩道で高校時代の知り合いにバッタリ会い、「お茶しよう」とカフェに入りお互いの高校からその日までの人生の話をした、と言う記憶があります。なぜこの人との会話が今でも頭に残っているのか。カフェでの彼の話の内容は「自分は」と「自分の」話で1時間以上。飽きてきた私は、どうやってこの時間を終わらせようかと考えていた時に、ある女性とのお付き合いの話になり「面白そう」と思った時のを覚えています。ポイントは、この女性にフラれた時に言った彼女の言葉。

「あなたはお金があるから付き合っているんだけれど、ハンサムではない、ではすまないあなたの顔はもう見たくない」

いや〜、よく言うわね、と彼女の言葉の大胆さに私もワオ。その数ヶ月後、その女性は数回お見合いをしたらしいのだが、全部ダメ。結局、彼にまた電話した、「話があるの」と言い、二人で会ったそうです。その時の言葉、

「将来の事を考えると、やっぱり貴方と一緒にいた方がいいかも。貴方の顔にはいずれはなれるわ」

こう言われた彼は、「もういい」と言ってカフェを出て行ったそうです。

その時、瞬間的に、「もういい」と言う言葉の意味の深さを感じさせられました。

言っていい事。これって思っていても言わないよね、と言う言葉。この場合は彼が外国人、彼女が日本人と言う言葉と文化の違いがありました。彼も一応日本語は話せるのですが、決してペラペラではない。彼女もちょっとしたお嬢様だったのか、;それはないでしょう」と言う気持ちがない女性。あまりにも彼の顔についてのコメントがひどい、と言う事で今度は彼がノーサンキュー。

私たちの知らない事。貴方の知らない事。何もかも知っている人はどこにもいません。でも、「これって言ってはいけない事」と言う事を知らないと、言う。普通に自分が思っている事だから言う。段々と世界的に情報網はあって普通、と言う時代になってきました。インターネットが出来てから、情報のインプットが少ない人は、一般的に相手にされない。長年日本人との仕事をしてきて感じているのは、「日本の常識以外を知らない日本人が多い」と言う事でした。

私も日本に住んでいた30年間の間、何度も言われた言葉があります。

「ここは日本なので」

ここは日本だからその事は知らなくていい、しなくていい。私はそうとしか解釈できない言葉です。

知らなかったで済む場合と、済まない場合があります。日本の例をもう一つ。これも結構前の話です。名前は忘れましたが、有名なお笑い芸人がブラックフェイスをした事がありましたよね。外国人から「いい加減にしろ」「やめろ、それ」と愚痴られ、「黒人を侮辱する意味はなかった」と言ったはいいのですが、日本に住む外国人は大勢、「知らないんだ、ブラックフェイスがどれだけNGか」と呆れていた。そして、日本に住む多くの外国人は「知らないんだ、こんな事でさえ」と外国人同士で話し合っていたのを覚えています。この当時、私は日本に住んでいました。カメラマンが歩道である女性二人に質問したのがテレビに出たのも覚えています。私くらいの年齢でしょうか、この二人は。「そんな事日本人が知っているわけがない」らしき言葉を言ったのを覚えています。

高校時代の知り合いの彼とのカフェの話を思い出しました。「知る訳がない」と言う日本人と、「どうして知らないの」とお互いに相手に対して「もういい」と思ったのでしょう。日本人は海外の変化についていく必要があるのか。日本を知らない外国人を日本人はどこまで嫌がるのか。お互いに相手の事を知らなすぎる。

何が言いたいのか。

私は、「もういい」と言う言葉は強烈だと思っています。「本当にもう嫌」と思う時に使う言葉だと思っています。彼がその女性がどうしてその言葉を使ったのかは分かります。これは私が外国人だから?それとも、彼女のあの言葉の酷さは外国人じゃなくても日本人も「キツイ」と思うのか。外国人観光客について思い切り愚痴っている日本。私は「もういい」存在なのでしょうか。日本を離れて4年目。段々と日本での自分の立場が分からなくなってきた私です。

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